日本神話(古事記)

[31]オウスがヤマトタケルになるまで

景行天皇はこの小碓王オウスの荒々しい性格と、信じられないほどの怪力を恐れたので、遠ざけるために、自分に従わない西の熊曽建クマソタケル兄弟を討てと命じたよ。

このとき、小碓王オウスはまだ髪を額に結っている子どもだったんだ。

小碓王オウスは景行天皇に何も持たせてもらえなかったので
叔母の倭比売命ヤマトヒメのところに行って
女性の衣装を分けてもらい、剣を忍ばせ旅立ったよ。

熊曽建クマソタケルの家にたどり着いたら、家を建てていたので
数日後の新築祝いを待っていたんだ。

宴会の日になって、小碓王オウスは少女の女装をして
宴会の女性たちに混じって家に入り込んだよ。

すると熊曽建クマソタケルの兄弟は小碓王オウスの少女の女装を見て気に入り
兄弟の間に座らせて、酒盛りしましたよ。

宴会が盛り上がったとき、懐の剣で兄の胸に突き刺したんだ。

弟は恐ろしくなってにげてしまったんだけど
すぐに追いかけ、階段の下まで追いかけて背中の皮を捕まえて、剣を尻から突き刺したよ。

熊曽建は、その剣を動かさないで俺の言うことを聞いてくれといったから
剣は動かさずに抑え込んだよ。

熊曽建クマソタケルの弟が「お前は誰だ?」と言ったのでオウスは
「わたしは日本を治める景行天皇の子供で名前は倭男具那王ヤマトオグナだ。
お前達が、従わず無礼だと景行天皇が聞き、殺してしまえと派遣されたのだ」
と言ったよ。

熊曽建は、認めて西には自分たちより強いものはいないけど、
大和に小碓王オウスのような強い男がいたので、自分の名前を献上したんだ。

「これより倭建御子ヤマトタケルノミコ名乗れ」
という言葉を聴いて、小碓王オウス熊曽建クマソタケルを熟れた瓜を割くように切り裂いて殺したよ。

それから小碓王オウス倭建御子ヤマトタケルノミコと呼ばれるようになって
大和へ帰る途中で山の神や、河の神や、海峡の神を従えたんだ。
地方の聞き分けのない勢力を平定させたってことだね!

倭建御子ヤマトタケルノミコとなった小碓王オウスは、
「出雲の国」へと入り、出雲の勇者「出雲建イズモタケル」を殺すため、まずは親友になったよ。

木で偽の刀を作り身につけて、二人で肥川に水浴びに行ったんだけど
水浴びから上がった時に、出雲建イズモタケルの刀と自分の刀とを取り替える提案をしたんだ。

刀を交換してから、倭建御子ヤマトタケルノミコがちゃんばらごっこをしようと言って刀をぬいたんだけど
偽物の刀を持っている出雲建イズモタケルは刀が抜けなかったよ。

そこで倭建御子ヤマトタケルノミコは、容赦なく刀を抜き、
出雲建イズモタケルを切り殺して歌を歌ったよ。

やつめさす 出雲建イズモタケルが 佩(ハ)ける刀 黒葛(ツヅラ)さは巻き さ身無しにあはれ

出雲建イズモタケルが 身につけた刀ときたら
蔦をたくさん巻いて見た目はいいが
刀身がないとは気の毒だ〜♪

そんな歌を歌って、倭建御子ヤマトタケルノミコは出雲を平定して
大和に戻って天皇に報告したよ。