この時代、大毘古命を高志道(コシノミチ=越国)に、
大毘古命の子供の建沼河別命を東の国の12の国に派遣して
反抗的な者たちを従わせたんだ。
大毘古命が越国に行った時、巻きスカートの少女が
山代の平板に立って歌を歌ったよ。
「天皇を殺すつもりの怪しいものが
裏の戸から行き違い、表の戸から行き違い狙われているのも知らないで…」
こんな歌を歌うので少女に尋ねるけど
少女は何も言ってない、歌っただけといいどこかへ消えてしまったんだ。
大毘古命は引き返し崇神天皇に歌のことを伝えたよ。
すると崇神天皇は、山代国にいる大毘古命の義兄である建波邇安王が
野心を抱いた兆候だろうから、
日子国夫玖命を副官にして出発するよう伝えたんだ。
大毘古命と建波邇安王は和訶羅河(ワカラガワ)を挟んで向かい合い、
戦争が始まったよ。
それでその土地を「伊杼美(イドミ=挑み)」というようになり、現在は今豆美と言うんだ。
日子国夫玖命が射った矢が建波邇安王に当たり
あっさり死んでしまったよ。
大毘古命は祟神天皇の命令通りに、高志国(コシノクニ=越国)へと行き
そこで東へ派遣された息子の建沼河別命と会って合流したんだ。
これで各地域の平定を終えて、天下は平和になって、人々は豊かになって、栄えたよ。
これをたたえて
「初国知らしい御真木天皇」と言ったんだ。
崇神天皇が国を統治した初めての天皇だという宣言だよ。