日本神話(古事記)

[20]山幸彦と海幸彦

長男の火照命ホデリのみこと海幸彦うみさちひことなって海で漁をしていたよ。
三男の火遠理命ホヲリのみこと山幸彦やまさちひことなって、山で狩りをしていたんだ。

ある時、弟の火遠理命ホヲリのみことこと山幸彦が道具をかえっこしようと、兄の火照命ホデリのみことこと海幸彦に提案したよ。
何度もしつこくお願いしてやっと取り替えてもらったんだけど、山幸彦は魚を一匹も釣れないまま兄の釣り針を失くしてしまったんだ。

兄の海幸彦が道具を戻そうと言ってきたので、弟の山幸彦は針を失くしたことを打ち明けて他の針を返そうとしたんだけど、「元の針を返せ」と言って受け取ってもらえなかったよ。

弟の山幸彦は困り果てて海辺で泣きくれていると、塩椎神シオツチの神がやってきて声をかけてきたので、理由を話すと、小舟を造って山幸彦を乗せ、綿津見神ワタツミの神の宮殿まで行ったら、そこの木の上で待ってなさいと言ったんだ。

 

木の上で待っていると、豊玉毘売トヨタマヒメの侍女が出てきて声をかけてきたので、
水をくれと頼み、自分の首飾りの玉を口に含み、もらった水の中に入れると、玉が器から取れなくなったよ。
侍女は驚いて豊玉毘売トヨタマヒメへ持っていったんだ。

一体誰なんだと思いつつ豊玉毘売トヨタマヒメは山幸彦を見に行ったよ。
すると、とても美しい人だったのでお互い一目で好き同士になったんだ。
それから父の綿津見神ワタツミの神に伝えるとニニギの御子とわかったので家に迎え入れたよ。
すぐに、山幸彦と豊玉毘売トヨタマヒメとの結婚式を挙げ、それから3年、山幸彦はこの海に住んだんだ。

だけど、三年たったある日、山幸彦が嘆いていたので、心配になった綿津見神ワタツミの神はなぜ嘆いてるのかきいたよ。
そこで、初めて3年前の出来事を聞いた綿津見神ワタツミの神は、海の魚たちを集めて山幸彦が海で無くした針のことをきいてみたんだ。
すると、喉に何か引っかかってつらそうな鯛がいるという情報をキャッチしたので、鯛を調べてみるとその釣り針がでてきたんだ。

綿津見神ワタツミの神は、山幸彦が兄の海幸彦に釣り針を返すときに、兄をこらしめる呪文を教えてあげたよ。
そして、サメ達に誰が一番早く山幸彦を兄のところへ送れるか聞いて、一日で送れると言ったサメに山幸彦を乗せて地上の故郷に帰らせたんだ。
綿津見神ワタツミの神の言う通りに兄に釣り針を返すと、呪文が効いて兄はどんどん貧しくなっていったよ。
そしてとうとう兄が山幸彦に「これからあなたを昼も夜も守ります」と約束したんだ。