日本神話(古事記)

[21]豊玉姫の出産とアエズ

豊玉毘売ご懐妊

豊玉毘売トヨタマヒメが夫の山幸彦の故郷へ来て
「わたしは妊娠して、出産の時期になったけど、天つ神の子を海で生むべきではないと思ってここまで来ました」
と言ったんだ。
そこで山幸彦は、海辺に鵜(う)の羽を萱(かや)の代わりに葺(ふ)いた産屋(うぶや)を造らせていたんだけど、産屋の完成がまだ途中の段階で陣痛(じんつう)がきてしまった豊玉毘売トヨタマヒメは、産屋に入って行ったよ。

豊玉毘売トヨタマヒメは山幸彦にむかって「出産のときには本来の姿に戻ってしまうので、絶対に私の出産シーンを見ないで」としっかりと前振りをして出産に挑んだんだ。

これもお約束だけど、山幸彦は好奇心にかられ、出産のシーンをのぞき見てしまうよ。

するとびっくり!妻はでっかいサメの姿に戻って、お産のためのたうち回っていたもんで、山幸彦は怖くなって逃げだしてしまったんだ。これもあるあるだね!

 

豊玉毘売、妹の玉依毘売に息子を託す

豊玉毘売トヨタマヒメは見られたことを知って、恥ずかしくてたまらなくなって
「本当は、海と陸を行き来して子どもを育てたかったけど、正体を見られて死ぬほど恥ずかしく思う」
と言って生まれたばかりの子を泣く泣く置いて去ってしまったよ。

その時生まれた子は、生まれた産屋からとって「鵜葺草葺不合命ウガヤフキアエズのミコト」と名付けられたんだ。
以下アエズと呼ぶよ。

豊玉毘売トヨタマヒメは夫に恥ずかしい姿を見られてしまって、すごく恨んだんだけど、どうしても愛しい思いがあったので、アエズを育てるために自分の妹の玉依毘売タマヨリヒメを二人の元へ送ったんだ。

山幸彦は高千穂の宮で580歳まで生きて、そのお墓は高千穂の山の西にあるとか。

アエズは育ての母、玉依毘売と結婚

さらに、豊玉毘売トヨタマヒメの息子のアエズは、おばである玉依毘売タマヨリヒメを妻として、次の子たちを授かるんだ。

五瀬命イツセノミコト
稲氷命イナヒノミコト
御毛沼命ミケヌノミコト
神倭伊波礼毘古命カムヤマトイワレヒコ

の4名だよ。

この内、御毛沼命ミケヌノミコトは常世の国へ行ってしまい、稲氷命イナヒノミコトは母(玉依毘売タマヨリヒメ)の国へ行くと言って海へ入っていったんだ。

この地日向(ひむか)今の宮崎県に残ったのは長男の五瀬命イツセノミコトと、四男の神倭伊波礼毘古命カムヤマトイワレヒコだったんだけど、この四男が後に初代天皇神武ジンムになるんだ。。

ニニギの天孫降臨から、山幸彦の海神国の訪問を経てアエズの誕生で終わる物語を
「日向三代(ひむかさんだい)」というよ。
古事記でも、ここまでが、神の話だよ。
次からは、天皇が統治する人代に入っていくよ。