日本神話(古事記)

[37]神功皇后の朝鮮出兵(三韓征伐)と出産

建内宿禰タケウチノスクネは驚き怯えて仲哀天皇の遺体を、モガリの宮殿に移したんだ。

この時代、天皇が死ぬと、「モガリ」を行ったんだけど、モガリとは遺体を安置しておき、腐って骨になるのを遺族が「見る」というものだよ。遺体が完全に白骨化するまで、定期的に見に行くんだ。

それから国中から「ぬさ」を集めたよ。「ぬさ」とは神に捧げる物品のことだよ。

その宮殿で、
生け剥ぎ…生きた獣の皮を剥ぐこと
逆か剥ぎ…尻尾から獣の皮を剥ぐこと
畦離(アハナチ)…田んぼの畦を壊すこと
屎戸(クソヘ)…聖なる神殿にウンコを撒き散らすこと
上通下通婚(オヤコタワケ)…親子間の近親相姦
馬婚(ウマタワケ)…馬との獣姦
牛婚(ウシタワケ)…牛との獣姦
鶏婚(トリタワケ)…鶏との獣姦
犬婚(イヌタワケ)…犬との獣姦

の罪を集めて、ケガレを払う儀式を行ったんだ。

それからまた、建内宿禰タケウチノスクネが沙庭(さにわ)で神の言葉を求めたんだけど、
神からの言葉は、先日仲哀天皇が亡くなったときの神託と同じものだったよ。

続けて、この国のすべては、腹の中の子供の治めるものだと言われたので
建内宿禰タケウチノスクネは腹に宿る神は男か女かと問うと、
神を宿す神功皇后は男だと答えたよ。

そして建内宿禰タケウチノスクネはさらに、今、しゃべってる神の名を教えてほしいと
とたずねたんだ。

すると、アマテラス大神の意思で、底筒男ソコツツノヲ中筒男ナカツツノヲ上筒男ウハツツノヲの神だと答えたよ。
イザナギの禊で生まれた、住吉三神のことだよ。

ほんとうに、西の国(新羅(シラキ):朝鮮半島)を求めるのならば、神々に『ぬさ(=神に捧げる物品)』を奉納し、私の魂を船に乗せ、真木(植物の名前)を焼いた灰をヒョウタンに入れて、箸と平たい皿を作って、すべて海に散らし浮かべて、海を渡るのだ」

と言ったんだ。

そこで皇后は神が教えた通りにして、兵士を集めて、船を並べて海を渡ろうとすると
海の魚達は皆皇后の船を背負って運んだよ。

強い追い風が吹いて、船はどんどんと進んだんだ。

この船が立てる波が、新羅の国に津波となって、国の半分まで浸したよ。

これで新羅の国王は恐ろしくなり
天皇の命令に従って馬飼いとして天地の続く限り、おつかえすると言ったんだ。

これにより新羅を馬飼いの国とし、百済は海の出張所としたよ。

皇后は杖を新羅の国王の家の門に突きたてて、住吉三神の荒御魂(アラミタマ)を祀って、国を守る神として鎮座し、海を渡って帰ったんだ。

実は、この皇后の朝鮮征伐が終わっていないというのに、腹の子(ホンダワケ=応神天皇)が生まれそうになったことがあったんだけど、
皇后は、ひとまず石を腰に巻つけて出産を押さえることに成功!
九州の筑紫に渡ってから出産したよ。

(ホンダワケ=応神天皇)が生まれた土地を「宇美(ウミ)」といい、
その腰につけた石は筑紫の伊斗村にあるんだ。

筑紫の松浦県(マツラノアガタ)の玉島里(タマシノサト)に到着して、川のほとりで食事をしたのが4月の上旬だったんだけど
川の岩に立って、腰布の糸を抜き、ご飯粒を餌にして、鮎を釣ったよ。

それで4月上旬のころ、女性が腰布の糸を抜いて、ご飯粒を餌にして鮎を釣ることが、絶えず行われるようになったんだって。